• 候補者アンケートの結果を公表します

    立候補者1504人を対象に「あなたは政治家として何を実現しますか」と題したアンケートを行い、789人からご回答いただきました。その結果を公表します。 Read More
  • 政権実績評価
    公開中

    2012年民主党政権の実績評価の評価基準について.
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経済政策のマニフェストをどう読むか

小峰隆夫氏(法政大学大学院政策創造研究科教授)

財政再建と経済成長

 今の日本経済、色んな課題があるのですが、大きく分けると財政再建していくということと、それから経済成長をなるべく高めていくという、この二つが重要だと。これはどのような政党が政権をとっても必ずやらなくてはいけないことだと思います。

今回の自民党の選挙公約を見ますと、このうちの財政については一応書いてはあるのですが、やはり力の入れ方が弱いなという印象を受けます。これは恐らく財政について書きますと、国民の負担を伴うような話。これは歳出カットにしても、増税にしても、そのような話を伴わざるを得ないので、選挙の公約としてはなかなか言いづらいということがあったのではないかと思います。

 

踏み込み過ぎた金融政策

一方、成長については、色々書いてあります。そこで、成長について公約を見ますと、先ず経済成長するために何ができるのか、というのが、政府がやるべきことと、金融政策に期待すると分野と、二つがあるのですが、これは選挙前の色々な議論の中で、金融政策はどうあるべきかという点が、かなり大きな争点になってしまったという気がします。少し、金融政策に議論が行き過ぎている印象があって、本来政権をとった人は、政府が何をするのかということを議論するべきであって、もちろん金融政策も重要なのですけども、金融政策は基本的には日銀が独立的に運営するということですから、あまり軽々にこの分野に踏み込まない方が良いと。あまりここに踏み込んでしまいますと、日銀の独立性が将来脅かされるのではないか、金融政策に対する信任を損なってしまうのではないか、懸念されます。

それでは、政府としてどのようなことをやろうとしているのか、いろんなことが書いてあるのですが、一つ注目されるのが、短期的な側面で、今景気がだんだん悪くなっているものですから、大型の景気対策をやるという表現があります。これは恐らく経済界からは支持する声があるかもしれませんが、今の財政状況でどれだけ大型の景気対策が可能なのかという点はかなり疑問ですし、あまりここに力を入れてしまうと今度は財政と矛盾してしまう・・・ここはあまり力を入れすぎると将来に禍根を残すという点が心配です。

 

評価できる規制緩和の国際比較テスト

長期的には、これは、私はある程度評価できると思うのですが、規制緩和をする際に、国際比較テストのようなものをやっていくと。それで国際的なベスト・プラクティスを導入し、企業が最大限活動しやすいような環境を作っていくと言っていますので、これはその通りだと思います。これはぜひやってほしい。ただ、これをやっていくときに、こういった仕組みを変えるといったことは、正に政府がやらなくてはいけないことなのですが、その中で、大変重要な仕組みとして、例えばTPPのようなものにどう取り組んでいくのか。それから労働市場の柔軟性をどのように確保していくのか。それから原子力とも絡んでエネルギーの安定供給をどうするのか。それから社会保障、医療、年金、介護、こういったものをどうやって改革していくのか、という非常に大きな問題があるのですが、こういった本当に重要な問題については、やや踏み込みが足りないのではないかと思います。

TPPについては、「聖域なき関税撤廃だったら反対する」ということしか書いてないので、将来これをどうやって位置づけていくのかというのがよく分からない。それから、労働市場の流動化というのが、非常に重要なのですが、これについて触れられていませんし、原子力についても簡単にいえば、先延ばしのようなことになっている。それから、社会保障についても必ずしも十分な検討がない。

 

反発が強い政策こそ、将来の方向性を示せ

恐らくこれは、こういった問題に踏み込んでいくと、TPPだと農業団体が反対する、原発だと脱原発の人たちが反対する、社会保障だと高齢者の反発を招くと。といったようなことで、何か思い切ったことを言うと、どうしても反対する人が出るという問題ばかりだと。こういった問題に踏み込めないというのは、自民党だけではなくて、各政党共通だと思うのですが、選挙の前なので、どうしても特定の勢力の批判を受けるような政策は打ち出しにくい。しかし、実はそういった政策こそが本当に、いま日本が決めなければ政策だと思いますので、この辺はぜひ選挙の中で論戦を通じて、将来の方向を明らかにしてほしい。

このような問題を考える時に、政策目標をどう考えるかということが非常に重要なのですが、政府ができることと、民間に期待することというのを分けて考えることです。

例えば、成長率を何%にしたいというときに、これは政府が好きなようにできるものではないので、民間に期待する分野というものが非常に多いということです。公務員の人件費を削るとか、こういったことは政府が実際にやればできる事ですから、これは政権を取った後に実行するべき公約と受け止められた。ということなので、どこまでが責任をもってやる公約なのか、どこまでが単なる期待なのか、ということをぜひ見分けていくことが重要だと思います。

それから、こういった政策をやることによって、どのような経済が実現するのか、この中では名目3%以上の成長を目指すと言っているのですが、これは少し違和感がある。普通、成長率というときは実質成長率を言いますので、実質成長率がどうなるのかによって、雇用の姿も違ってくるし、我々の実質的な生活水準も違ってくるのですから、基本は実質だという中で、名目しか掲げていないというのは少し違和感がある。

この辺も実質、名目はどのような関係になっているのか、それと2%のインフレ目標はどのような整合性があるのか、ということもぜひ明らかにしていってほしいと思います。

候補者アンケート「あなたは政治家として何を実現しますか」結果公表

2012年衆議院選挙 立候補者アンケート

現在、政党政治への不信感が募り、有権者がどの政党を選べばよいのか判断できなくなっています。そうした中で、候補者の皆様がどのような課題認識を持ち、いかなる政策に取り組もうとしているのか。1500人の立候補者全員にアンケートを送付し、789名の方からご回答いただきました。その結果を、各選挙区別、比例別(比例単立候補者)に公開いたします。下記の日本地図から、ご自身の選挙区を選択してください。

⇒実施したアンケートはこちら

  北海道
 
        青森  
      秋田 岩手
      山形 宮城
石川 富山 新潟 福島
長崎 佐賀 福岡   山口 島根 鳥取 兵庫 京都 滋賀 福井 長野 群馬 栃木 茨城  
  熊本 大分   広島 岡山 大阪 奈良 岐阜 山梨 埼玉 千葉
  鹿児島 宮崎           和歌山 三重 愛知 静岡 神奈川 東京
          愛媛 香川
沖縄         高知 徳島



比例区のアンケート結果はこちら

100706_00.jpg北海道ブロック / 東北ブロック / 北関東ブロック
南関東ブロック / 東京ブロック / 北陸信越ブロック
東海ブロック / 近畿ブロック / 中国ブロック
四国ブロック / 九州ブロック

マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは

 メディアに取り上げられること自体はうれしいことなのですが、取り上げられ方には納得がいっていません。結果として点数はつくのですが、それよりもこの評価書に書いてある一番伝えたいメッセージは、国民との約束を軸にした政治をどうしても取り戻さなければいけない。そのためにも、自分たちでマニフェスト、公約を手にとって、それを自分たちで評価するための手法を、きちんと伝えているわけです。

⇒つづきはこちら

【第4回】 マニフェスト評価を通じて見えてきたこと
【第3回】 マニフェストをいかに読み解くか
【第2回】 今回の選挙を「有権者主体の政治」の実現に向けたスタートに

【第1回】 有権者から政治にマニフェスト逆提案を

民主党政権3年の実績評価

  2009年衆院選
マニフェスト
言論NPO実績評価 理由・備考

原則1

官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ 実現できず 「国会改革関連法案」を撤回。
原則2 政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ 実現できず 党の政策調査会の復活、事前承認制の導入など、政府一元化を断念。
原則3 各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ 実現できず 「政治主導確立法案」を取り下げ。国家ビジョンを策定する仕組みを作れず。
原則4 タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆(きずな)の社会へ 道筋見えず 「新しい公共」を提案。しかし、強い市民社会への道筋は示されず。認定NPO法人の要件緩和もほとんど効果見えず。
原則5 中央集権から、地域主権へ 道筋見えず 地域主権の全体像を描けず。「出先機関廃止法案」は先送り。

その他、詳細な項目については、こちらをご覧ください

2012年民主党政権実績評価の評価基準については、こちらからご覧ください

主要5政党の分野別マニフェスト評価

121210_05
社会保障 経済政策 農業 原発・エネルギー 財政再建 市民社会 震災復興 教育 外交・安全保障 一票の格差などの政治改革 地方分権

※配点は、形式要件に40点、実質要件に60点となっています。
※マニフェスト評価の詳細は、上記分野をクリックしてください。

⇒2012年マニフェスト評価 総論はこちらからご覧ください

⇒2012年マニフェスト評価基準はこちらからご覧ください

日本の政党は国民に本気で向かい合っているか

 
 政党
公約集から見る
"本気度"
公約集の中味から見る
"本気度"


公約自体の"本気度"
※数値目標、達成時期、財源を明記した公約の割合※1
約束度
※2
ガバナンス度 ※3
絞り込み度 ※4
課題への誠実度※5
正直度
※6
 民主党
11 12.3%
 自民党
11
11.0%
 公明党
22.6%
 未来の党
10.8%
 維新の会
10.4%
 日本共産党
20.9%
 みんなの党
9.0%
 社会民主党
7.9%
 新党大地
15.8%
10
 国民新党
11.9%
11
 新党改革
2.9%
12
 新党日本
0.0%


※1.公約自体の本気度(%):各政党のマニフェストの公約のうち、数値目標または達成時期、財源のうち一つでも明記されている公約の数をマニフェストの全ての公約の数で除したもの。
※2.約束度:マニフェストの表紙に、「マニフェスト」あるいは「国民との約束」と書かれているものは3点、そうではなく単なる「約束」と書かれているものは1点、約束に関する表現がないものは0点。
※3.ガバナンス度:マニフェストに党首1人の顔が掲載されていれば3点、そうでなければ0点。
※4.絞り込み度:重点項目について、0~5個が2点、6~10個が1点、11個以上が0点。
※5.課題への誠実度:言論NPOの有識者アンケートから抽出した6つの課題(財政再建、経済の成長戦略、社会保障制度改革、エネルギー政策、外交・安全保障、民主主義の制度改革)に関してマニフェストで積極的に取り組む姿勢がどの程度見られるかによって0~2点を配点。
※6.正直度:消費税引き上げに関する記載があれば2点、消費税の記載がなく、それに相当する負担を公約として記載していれば1点、負担に関する記載がない場合は0点。

マニフェストをどう読むか

経済政策について 医療政策について 社会保障政策について
小峰隆夫氏
(法政大学大学院政策創造研究科教授)
上 昌広氏
(東京大学医科学研究所特任教授)
西沢和彦氏
(日本総研上席主任研究員)

市民社会政策について エネルギー・環境政策について 農業政策について
田中弥生氏
(大学評価・学位授与機構准教授、日本NPO学会会長)
松下和夫氏
(京都大学大学院地球環境学堂教授)
生源寺眞一氏
(名古屋大学大学院生命農学研究科教授)